学校や地域、行政の間に立ち、人と人、人と組織をつなぐ地域コーディネーター。悠々と流れる一級河川「川内川」を舞台に、このまちの魅力を再発見し、多くの人へ伝えようと奔走する一人の男性がいる。
今回は、地域の可能性を信じ、まちづくりに取り組む男性の思いに寄り添う。
「人のとなりに」とは・・・
文字通り、その人の隣にいて、思いに寄り添うことや人柄を表す言葉「人となり」をイメージしたコーナーで、人物や活動の紹介だけでなく、その人の思いにスポットを当てることを目的としています。
「身近な人を豊かにしたい」
「どんな場所でも、与えられた場所で身近な人を幸せに、豊かにすることが好き」と笑顔で話すのは、地域コーディネーターの田尾友輔さん。
高校時代は美術を学び、その後、東京の美術大学で建築設計を専攻。建物だけでなく屋外空間のあり方を考える「ランドスケープ」に出会った。人々の暮らしと空間との関わりを学ぶ日々は、新鮮で刺激に満ちたものだったという。
大学2年生の春休み、大きな転機が訪れる。2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災。東京で被災した田尾さんは、その経験を通して建築に対する考え方が変わったそうだ。「見た目を重視した建築ではなく、人が生きるための暮らしや環境を支える仕事がしたいと強く感じた」と話す。卒業後は東京で建築関係の仕事に就き、再開発事業などにも携わった。しかし、自身が思い描く「人の暮らしのそばにあるまちづくり」との違いを感じるようになったという。「経済を回すことも大切な仕事。ただ、自分はもっと目の前で暮らす人たちや、その先の未来につながる環境づくりに関わりたいと思った」と語る。そうして転職を決意。縁あって本市でまちづくりに携わることになり、9年ぶりにUターン。「身近な人を幸せにできる仕事がしたかった。地元だからこそ知っていることも多くて、協力してくれる人もいる。その環境はとても大きかった」という。
「何も無い」ではなく、「気付いていない」
Uターン後、田尾さんは「東京や京都など、多くの街では、川が人々の暮らしと密接につながっているが、帰郷して見た川内川周辺には、人の姿が少ない」と感じた。さらに、「薩摩川内市には何も無い」という声もあったという。しかし田尾さんは、その言葉に「本当に何も無いのではなく、すでにある魅力を見逃しているだけなのではないか」と違和感を覚えた。そこで、川内川を起点に、人が集い、地域の魅力に気付くきっかけをつくる。田尾さんのまちづくりは、そんな思いから始まった。
地域の力をつなぐ
田尾さんはこれまでに、「川で人が交わり、まちが変わる」をコンセプトとした「私設の公民館」SOKOKAKAKAの運営をはじめ、本市でさまざまなまちづくりに寄与する企画や事業を立ち上げてきた。
「まちづくりに正解はない。仮説を立て目標に向かって実践し、それに地域の皆さんが『まずはやってみよう』と力を貸してくださる。その過程がとても楽しい」と笑顔で話してくれた。
現在は、高校生と企画するイベントや川内大綱引のPRなど、新たな取り組みも進行中だ。
「地域の力と個人の力、そして自分にできることを組み合わせながら、これからも地域の魅力を発信していきたい」と新たな挑戦への意欲が次々と湧き上がっている。
田尾さんの中には、地域をもっと面白く、もっと豊かにするためのアイデアがまだまだたくさんある。地域の魅力を未来へつなぐ挑戦は、これからも続いていく。

7月7日に川内川で開催された「水辺で乾杯」の様子