気象、火山、地震の専門家や過去の災害の経験を伝える語り部が務める専門防災アドバイザー。平成9年に発生した鹿児島県北西部地震で、東郷町藤川の本俣自治会において被災した経験をもとに、自主防災組織の必要性や地域で支え合う防災の重要性を伝える専門防災アドバイザーの思いに寄り添う。
「人のとなりに」とは・・・
文字通り、その人の隣にいて、思いに寄り添うことや人柄を表す言葉「人となり」をイメージしたコーナーで、人物や活動の紹介だけでなく、その人の思いにスポットを当てることを目的としています。
北西部地震が教えてくれたこと
「災害は、いつ起こるか分からない。だからこそ、日頃からの備えが大切なんです」
穏やかな口調で語るのは、鹿児島県専門防災アドバイザーとして活動する津田盛吉さん。東郷町藤川の本俣自治会で自主防災組織の事務局長を務めた経験をもとに、自主防災組織の必要性や地域で支え合う防災の重要性を伝えている。
津田さんが自主防災活動に力を入れるようになったきっかけは、平成9年に発生した鹿児島県北西部地震だった。
当時、津田さんが居住していた、東郷町藤川の本俣自治会では山間部の小道沿いで計20箇所の斜面が崩壊した。住民たちは不安の中で声を掛け合い、安否確認を行った。この経験から津田さんは、「地域で助け合うこと」の大切さと「災害に備える組織の必要性」を強く認識し、自主防災組織の立ち上げに尽力した。
本俣に受け継がれる「結の精神」
津田さんが防災活動の原点として大切にしているのが、地元に古くから根付く「結」の精神だ。
結とは、人手が必要なときに地域住民が力を貸し合う相互扶助の文化。「困ったときはお互いさま」という考え方が、昔から暮らしの中に息づいている。北西部地震の際にも、その精神は自然と発揮された。地域のつながりが人を支え、命を守る。その経験が、現在の活動につながっている。

災害の記憶を風化させないために
津田さんは本俣自治会での、災害の教訓を次世代へ伝えるため、平成10年に自主防災組織を立ち上げ、毎年防災訓練を実施していた。訓練では、避難経路や避難場所の確認に加え、アルファ米の調理や試食、防災グッズの点検などを行っていた。
「備えているつもりでも、いざという時に使い方が分からなかったり、賞味期限が切れていたりすることがある。実際に体験することが大切だ」と話し、防災をより身近なものとして感じてもらうことを目指している。
現在は津田さんが中心となって関わる立場ではないが、本俣自治会ではその取り組みは今も受け継がれ、避難訓練が続けられている。
こうした活動を通して、防災の意識は着実に次の世代へと引き継がれている。
津田さんは、現在、自身の経験をもとに県内各地で自主防災組織の講演を行い、「自分たちの地域は自分たちで守る」という考え方と共に、「自主防災組織の役割は災害時だけではない」と伝えている。
「日頃から顔の見える関係を築き、地域の状況を把握しておくことで、いざという時に助け合うことが大切だ」という。
次の世代へつなぐ思い
津田さんは、「防災は特別なことではない。日頃から家族や近所の人と話し合うこと、避難場所を確認することも立派な備え。一人でも多くの人に日頃からの備えを意識してもらえたらうれしい」と話す。
「地域を守る力は、行政や、誰か一人の力だけで生まれるものではない。人と人とのつながりの中で育まれていくものだ」とにこやかに話す津田さんの活動は、その大切さを私たちに教えてくれている。